FacebookはSocial Webの配管工になれるのか(Googleの内と外の収益構成)

IT’S CRUNCH TIME FOR FACEBOOK(「フェイスブックにとっての試練の時期」)で、フェイスブックはデスティネーションサイトになってはダメで、ソーシャルウェブの配管工になれ、と書かれていた。


この意見は、フェイスブックの収益上の肝はグーグルみたいに外部サイトに広告を配信するところにあるんじゃないの、と思っている僕のものに近い。もちろん彼らも外部への広告配信はやっているし、たしかにそれは一気に展開できない繊細さをもった事業ではあるし、まずはモバイルアプリ開発という順番もわかる。それでもデスティネーションサイトは流行り廃りがあるのは事実。


冒頭ブログの筆者のAndrew J Scottが書いているようにフェイスブック・コネクトを通じたLikeボタンやコメント欄とその書き込みは、結局のところフェイスブックサイトにユーザーを導くための施策である。また、閉じたフェイスブック空間で多くのコンテンツが書かれ、検索エンジンがクロールできないコンテンツが多くなるリスクが叫ばれていた時期もあったが、10億人のアクティブユーザーを超えても、それほど検索エンジンから見て大事にはなっていない。また公知にしたい情報は基本的にオープン・ウェブにあって、むしろフェイスブックの存在がオープン・ウェブのストック情報の質を上げる方向に働いている部分もありそうだ。


と書いてきたけれど、僕の持つこのアドセンス礼賛的な印象はアドセンスをグーグルが出した時の衝撃が大きすぎたからかもしれない。それは戦慄に近いものでさえあったから。そこで、これを機にグーグルの収益をGoogle Owned Sitesと外部のNetwork Sitesに分けて上場後(ただし必要なデータが開示されたQ3'06以降)の推移を見てみた。

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直近では、自社サイトの売上が大きく伸び、広告収入の71%を占めている。Youtubeからの売上が大きいのではないかと推測する。またNetwork Sitesの売上からAdSenseのTraffic Aquisition Costs(大手提携サイト以外への支払い)を引いた売上は(ここではPure Networkとする)、広告収入の11%ほどでしかないこともわかった。

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ただし、Pure Network Ratioの推移を見ると、06年から減少していたのが、Q4'08から上昇に転じ、Q3'10からまた下がって現在は11%ほどという動きとなっている。3つ目のグラフも2つ目のグラフと似た内容を示しているが、前四半期に対するそれぞれの売上の伸びを示している。ここ1年はNetworkの伸びが上回るかほぼ同じという感じ。

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この数字の解釈は難しい。グーグルが大きな集客力を持つサイトを今後は買収することがない、かつGoogle.comのアドワーズからの伸びもほとんどないと仮定すれば、Pure Network Ratioは15%というところまで2,3年で上昇することも考えられる。あるいは同じように数字が動くとしても、悪いシナリオとしてはGoogle.comを訪れる人が減るということも考えられる。そして当然逆に数字が動くということもあるだろう。


ただそもそもデスティネーションサイトになることを指向していないグーグルでさえ11%のPure Networkがあるという水準に照らせば、Facebookは事業リスクの観点から15%程度はその類の売上を持っても良いのではないかということは言えるのではないか。もちろん、圧倒的な集客力を保ちながら、ソーシャルウェブの配管工になることはAndrew J Scottが言っているようにかなり難しいことではあるのだが。