南カリフォルニア・リトルリーグ(UCLL)体験記 その1

我が家の10歳坊主は日本でも野球をやっていたので、San Diegoの地元のリトルリーグ(University City Little League = UCLL)に参加している。昨年6月に渡米し、9月から感謝祭前までの2ヶ月ちょっとのWinter Ballにまず参加し、現在はメインシーズンのSpring Ballに参加している。こちらは3月初旬から6月初旬までの3ヶ月である。


南カリフォルニアのリトルリーグは2009年の世界大会でSan Diego County の Chula Vistaが優勝するなど全般的にレベルが高い。気候の良さと人口の多さと野球人気が高い故だろう。http://en.wikipedia.org/wiki/Little_League_World_Series_(West_Region)


実はリトルリーグは住んでいる場所によって機械的に参加するリーグが決まる。リトルリーグの強い地区に引っ越すという話も聞いたことがあるが、12歳までのレベルだと、たまたますごいピッチャーが2人いて、エラーをしない守備を作れば州ではそこそこ上位までいける。逆にピッチャーに大したのがいなければ練習で勝てるチームが作れるわけではない。したがってチームとしての強弱は運の要素が強い。なので、本当に実力をつけたいうまい子どもはトラベルリーグという遠征ばかりでずっとメンバー固定のもっと強いチームに所属する。リトルリーグはあくまでもLocal Communityの開けた組織である。


Spring Ballは1月のTry Outから始まる。これは選手の能力を見極める場で落とされる子はいない。12週間で20試合以上こなすため、よほど優れたピッチャーがいない限り、ピッチャーは4,5人でローテーションを組む。まだ体のできていない子どものために投球数制限もかなり細かく規定されている。とは言っても選手は1チーム12名前後なので、多くのプレーヤが3つほどのポジションをこなす。故にTry Outでは内外野の守備と打撃と投球、それと走塁が行われた。


その結果と参加者数を見て、年齢によるカテゴリー別に何チームを作るかと選手の配分がUCLLのPresidentやManager(監督)によって行われる。これをDraftという。UCLLの2012年は10-12歳のMajorカテゴリーは4チーム、8-10歳のMinorカテゴリーは2チーム、13歳以上のJuniorsは2チームが作られた。チーム数の少ないMinorとJuniorsは近隣のリーグまで遠征して試合をしている。一方Majorのように4チームあればUCLL内のリーグ戦となる。


今年はMinorの年齢層が薄く、ほとんどの10歳はMinorへと割り振られたが、経験者でWinter Ballで目立った成績を上げたうちの坊主はMajorカテゴリー所属となった。聞けばMajorで最年少だという(ただし彼よりも背の低い子は2人いる)。2つのカテゴリーの実力差は明白だったし、息子は通っている小学校でも英語力ゆえ学年を1つ下げていて、いつも自分より年下とばかりの付き合いだったからこれは良かった。ただし10歳坊主は12歳の投げる重い硬球を外野までクリーンヒットで運ぶことができず苦労している。


Draft後、1月末にチームメンバーに監督からメールが届き、2月10日前後から練習が始まる。Draft制度があるとはいっても、地元でMinorからやっている子同士は顔馴染みである。ただし我がGiantsは初めて監督となるボリビア出身のアメリカ人。野球を本格的にやると決めた2人の息子の面倒をみるために監督をすることにした彼が、地元で長くやっている子以外の面倒を主として見るというチームだ。あとからわかったが、Draftでは昔からやっている子が上位2チームに集まったようだ。ボリビア監督はUCLLでのコーチ経験はあったものも、自分の子どもがやるのは今回が初めてで、それまではそれほどUCLLに深くコミットしていた訳ではなかったらしい。それゆえそういう役回りになったようだ。開かれた組織ではあるが、Board Membersが有利になるように実はチームが編成されているというのは、まあよくある話だ。


というわけでGiantsのメンバー構成は、日本人3人(うち2人はこちらで育った米国籍も持つ子)、ボリビア系アメリカ人2人、韓国人1名、それとオランダ系アメリカ人1名を含むローカルが5名。ボリビア系と韓国人は野球を本格的にやるのは初めてということで、ルールに馴染みがなく、これが試合では大きなハンデとなっている。この多国籍軍ぶりも南カリフォルニア的ではあるが、前述のとおり強い2チームはほぼ白人で、それにヒスパニックやアジアンやアフリカンとローカルのハーフという子がチラホラいる感じだ。というわけで我がGiantsは開幕後5試合で1勝4敗。


試合は週に2回で、ここでは土曜日と水曜日である。6イニングゲーム。UCLLのカテゴリー毎にグラウンドがあり、環境は素晴らしい。Majorだと内野も天然芝生。その他に2時間と短い練習が日曜日と平日の合計2回。それ以外にバッティングセンターに概ね週に1回チームで通う。つまり週に5日に何らかの予定が入っている。グラウンドに行くにもバッティングセンターに行くにも原則親の送迎が必要で、親は実に大変である。うちは子どもが1人で夫婦とも比較的時間があるので何とかなっているが、多くの親は朝7時過ぎから働いて16時頃には送迎できるようにしている。


練習には、ランニングなど体力づくりの基礎的なメニューは一切なく、準備体操とキャッチボールのほかは、守備練習とトスバッティング、フリーバッティング中心のメニューである。監督以外にボランティアで2名のコーチがいる。そして私も彼らが試合を欠席した時の1塁コーチ要員として、Ad Hoc Assisntant Coachをやっている。公式戦で開幕から3連敗した後に、「日本でよくやるが、こちらでやらない練習を教えてくれ」と監督が聞いてきたので「素振り(Swing Practice)」と答えたら、それ以来バッティングのフォームチェックをビデオを撮りながらやり、かつ素振りもやるようになった。これはMechanicsと言い、先のTravel Leagueの練習ではここがかなり重点的にやられているそうだ。というわけでリトルリーグの子どもには受けが悪い。


さて、3ヶ月で20試合以上のSpring Ballが終わると、LL毎に年齢別のAll Starチームが作られて、6月末からのトーナメントをLL代表として戦う。All Starは希望者が申請し(夏休みに完全に入っているので)、レギュラーシーズンの成績を基に選抜が行われる。選抜されると自宅の玄関の扉に「You are selected as a ALL STAR MEMBER」という貼り紙がされるようだ。UCLLでは昨年Juniorsという13〜15歳のカテゴリーがDistrictで優勝し、Sectionまで進んだ。


と、今回は制度的なあらまし中心の記述。試合の様子やUCLLを支える親たちのボランティアとそのコミュニティの様子についてはまた今度。